AP通信—中途半端日記—

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虚血性視神経障害

February 13th, 2009

2009年1月号の臨床麻酔,2月号のAnesthesiologyと虚血性視神経障害が取り上げられている.数年前,脊椎外科の腹臥位手術の合併症として問題となったことがある.さて,この虚血性視神経障害の発生率は,心臓手術と脊椎外科で高く0.3%くらい,その他の手術では,この1/100くらいの発生率らしい.原因ははっきりとしていないが,自然発症のものは動脈炎がベースにあることが多い.前方型虚血性視神経障害(AION,主に眼球内乳頭部の障害)と後方型(PION,眼球外の視神経部の障害)に分けられる.発症は男性で多い.

後方型は,脊椎外科手術,頸部の手術により発症し,発症時には乳頭浮腫はみらえない.動脈硬化,高血圧,糖尿病などの患者側要因に加えて,1000mL以上の出血,6時間以上の手術,低血圧,貧血などが関係していると考えられる.剖検所見では視神経内の梗塞巣が見いだされていて低灌流と血栓が直接の原因らしい.ということで,血管内ボリュームを保つこと,頭部を心臓よりも高く保つこと(静脈還流のため),頚静脈が圧迫されないように注意すること,貧血を避けること,低血圧を避けること(低血圧麻酔との因果関係は明らかとなっていない)などが対策となる.発症すると回復は望めない.

前方型は心臓手術時に多く,発症時に乳頭浮腫をみとめる.こちらは,乳頭のCup to Disk ratio(CD比)が関係してくる.CD比は緑内障が進行してくると大きくなり,0.7以上ではかなり緑内障が疑われるが,逆にこの値が0.2より小さいとき(つまり視神経の太さに対して出入りする強膜の穴が小さい?この説明であっているのか少々自信がない)に,AIONが起きやすいらしい.といっても,人口の20~40%はこのCD比が小さいタイプの乳頭らしい.こちらも,回復することはない.また両側の発生例も10~20%であるようだ.上に上げられたような低血圧や貧血とは相関がみられない.

金沢大学の眼科に聞いたところでは,いまのところこの虚血性視神経障害でコンサルトされたことはないそうだ.

”手術はうまくいきましたが,不幸なことに虚血性視神経障害がおきました,もう視力が回復することはないでしょう”というのでは,あたりまえのことだが患者さんは納得されないだろう.しかし,私たちには予防する手段も治療方法もない.となると,術前の説明と同意が大切である.Anesthesiologyの方の著者らは,0.3%という発生率があるのだから,心臓や脊椎手術の術前の説明に加える必要があるといっている.この確率は,実は術中覚醒の発生率よりも高いのだ.

原則として,0.1%(1/1000)以上の発生率の合併症に関してはあらかじめ説明しておく必要がある,という原則があるそうだ.悪性高熱は0.01%だから説明に加えなくてもいいことになる(うちの外来では説明しているが).しかし,”手術すると0.2%の確率で手術中に目が覚めていることがあり,0.3%の確率で視力に著しい障害がおきてこれは治ることはありません”と説明すると,かなり手術を躊躇する人がでてくるような気がする.さて,明日から説明しますか?

PS
今年の麻酔科学会で”術中覚醒・記憶”のシンポジウムの司会を担当します.その材料として電脳麻酔ブログの森本先生にお願いして術中覚醒に関するアンケート調査を始めました.術中覚醒研究室にアクセスしていただき,アンケートへのご協力をお願いします.特に術中覚醒が起きた症例の麻酔記録をお持ちの先生で,検討するために提供してもよいとお考えの先生がおられましたら,ぜひ私(tsune@med.kanazawa-u.ac.jp)まで連絡をお願いいたします.

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